日記

日記です

営業やってた頃の話

 けっこう単価の高い営業をやっていたことがあります。

 もともと、誰がどう見ても営業なんて向いてなかったんだけど、前職を辞めてから、1年近く無職が続いていて、当時は職業訓練に行くとか、そんな知恵さえ回らなかったし、このころ一緒に暮らしていた彼女が、もはや無職の自分を養うことに対して限界に近づいているような状態だったので、すごく焦っていた。この当時はなかなか景気も悪く、自分も無気力人間だったため、20〜30社ぐらいは受けたと思うけど、全然雇ってくれるところが見つからなかった。家の中はほんとギスギスしてて、たぶんこの時点で彼女には愛想尽かされてたと思う。

 そんなこんなで何とか受かったのが営業として、だった。

 この頃は本当に辛かった。だけど自分も未熟というか、世の中に対して逃げ腰な感じで、ほんとにクソみたいな人間だった。

 彼女とはその後、半年ぐらいで別れてしまった。確か、それまでそんな事が全く無かった彼女が突然、何の断りもなく帰ってこなくて、連絡も取れず、何回も連絡してやっと3日後ぐらいのこちらが仕事の時に、電話かけたら出てくれた。自分はすでに狼狽えていたし馬鹿だから何も察することもできず、こんな時は怒った方がいいんだろうなと、馬鹿みたいな判断で問い詰めたら、別れようと言われてパニックになった。その後どんな話になったか覚えてないが、当然その日も彼女は帰って来ず、後日もう1回だけ話をしたものの、彼女の気持ちは変わらず正式に別れることになった。

 その後しばらく経って、ある程度時間を空けてだったと思うが、彼女から連絡があった。置いたままの私物を取りに来たいとのことだった。自分も特に異論はなく、むこうの希望通りの日程で約束をした。そして約束の日、彼女がやって来た。久しぶりに会えて、すごく嬉しかった。持ち出しの作業は、自分が彼女の私物を、丁寧に段ボールに詰めて速やかに持って帰れるようにしておいたから、すぐに済んだ。最後は美しくみたいなことにこの時何故かすごくこだわっていたから、こんなことをした。さすがに今日で最後というのは分かった。辛かった。辛かったから、このままいてくれてもいいよ、みたいなおかしな事を言ったら、彼女はすごく困った顔をしてた。

 たぶんかなり前から自分に対する気持ちは無くなっていて、早く次なる生活を、心おきなく過ごしたい気持ちだったんだと思うし、それは自分のためでもあったんだろうけど、ちゃんと別れるという決断をして、実行してくれたんだと思う。感謝している。

 それからもう10年ぐらい過ぎたけど、元気にしてるんだろうか? 別れた季節は確か夏だった。あの年の秋は、人生で1番辛かった。もう全然違う所に住んでるけれど、一緒に歩いて行ったすぐ近くのドラッグストアへの道は、一生忘れないと思う。もうどこにいるのかも知らない、一生会うこともないけれど、あなたが今、幸せであることを心から願っています。

 ありがとう。最後まで。どうか幸せに。